1円でも違うことへの執着心

大学時代にアルバイトしていたお寿司屋さんは、女将さんとその息子さんの二人でこじんまりと経営しているところでした。アルバイトの私たちは夕方から入って夜の営業時に働いていたのですが、出勤したらまずお店の準備をし、その後開店までの時間でまかないを食べさせてもらえたので、大学の授業終わりにお腹ペコペコでバイトに行けば、ご飯が食べさせてもらえるというビップ待遇でした。

しかも、そろそろお客さんに出すには賞味期限が迫っている…といった高級魚を食べさせてもらったり、握りのお寿司や海鮮丼などを食べさせてもらえる日も多々あり、すごく豪華でおいしいまかないを食べさせてもらっていました。

私以外にも、だいたいの子が一人暮らしをしながらお小遣い稼ぎをさせてもらっているような感じだったので、とてもありがたい環境でいまでも感謝しきれないくらいいいバイトをさせてもらっていたなーと思うくらいです。

バイトをしている学生は私を含めてだいたい6~7名ほどで、出勤時間、退勤時間はみんな固定、終わりの時間はその日のお客さんの入りなどの状況で早く終わる日もあれば、遅くなる日もあるなど様々なので、その日によって終わった時間を月のカレンダーに書き込んで帰るといったアナログなシステムでした。

私はもとからあまりお金に執着心がなく、これだけ待遇をよくしてもらって働かせてもらえるなら、お金を頂けるだけでもありがたいと思い、「今日は何時に終わったから、今月は○○円くらいあるな」とかざっくり把握しているくらいだったのですが、よく一緒に入っていた1つ上の先輩は、終わった時間を毎回自分の手帳に書き込んでいて、その月が終わると、自分で給料計算をし、必ず実際にもらった給料の金額と自分の計算した金額がぴったりあっているかどうかを確認していました。

確かに大事なことかもしれませんし、人間誰にでも間違いはあるので、大きく万単位で間違っていることもあるかもしれません。ですが、1円単位で違った小さなミスも逃すことなく、女将さんにもう一度計算しなおしてほしいと要求していたのです。終わる時間が本当に毎回ばらばらなので、細かく15分単位で給料計算をしてくれていて、たとえバイトの人数が少ないとはいえ、すべてを電卓で計算して袋に詰めてという作業はとても面倒だと思います。その時は言われたとおりに女将さんは計算しなおしたらしいのですが、どう計算しても渡した金額で間違いはなかったそうです。そのように伝えると、絶対的に自分があっていると言わんばかりにぶつぶつ文句を言っていたそうです。

本人が言っているところを実際に目の当たりにしたわけではなく、女将さんから愚痴のように聞かされたのですが、「そこまでする?」と驚いてしまって、同じようにお給料を頂いている立場からして、女将さんになぜか私が申し訳なくなってしまいました。普段からちょっと変わった人だったのそこまで女将さんからも好かれている人ではなかったのですが、この一件で完全に女将さんの先輩に対する態度が厳しくなったように思います(笑)

私は社会人になった今でも特に毎月もらえるお給料より、仕事の内容が楽しいことがやりがいで、特に貯金をしようと思っていたわけでもないですし、ほしいものは高いものでも自由に買っていましたが、自然にお金が貯まっていました。そういった意味であまりお金に執着しない性格はいまでも継続しています。あとは、いつもよくしてもらっている人の間違いなどに気づいたりしてなかなか言いにくいことがある時は、「まぁいいか」とあきらめてしまうことが多いので、間違いは間違いと割り切って指摘するその先輩のような強さは私にはなくて、理解しがたいと思ってしまったのかもしれません。